16,年の終わりと始まり
昨日はなんとなく落ち込んだまま家に帰ってそのまま眠ってしまった。
目が覚めてカレンダーを見て、今日がルルーディさんの誕生日である事を思い出した。
あ、しまった!
本当はデートに誘おうと思ってたのに…
今さら誘えないから、とりあえずプレゼントだけでも渡しに行かなきゃ。
プレゼント…銀のブローチを渡したかったんだけど、これじゃまるでプロポーズみたいで、また気不味くなりそうだから鞄の中に引っ込めてしまった。
デートの代わりに彼女の好きな釣りに誘ってみた。
やっぱり2人でいると幸せだなって思う。
帰り際に、彼女が明日のデートに誘ってくれた。
彼女から誘ってくれるのは初めてのことだった。
それだけの事なのに、なんだか昨日の出来事が何でもない事に思えてきたから不思議だ。
次の日は、新年1日。
なんだか早くに目が覚めてしまったので、彼女に会いに行った。
彼女はいつも早起きなので、もう庭に出て花の手入れをしていた。
あれ?いつもと雰囲気が違う…
その制服、もしかして農場管理官?
「どう、似合う?驚かそうと思って内緒にしていたの!」
農場管理官といえば国中の働き者が選ばれて就く職業!
結婚するなら農管勤めとか言われてるとかなんとか…しかも制服が…可愛い。
「あ…うん、とっても似合ってる…可愛いよ。」
言ってる私も言われた彼女もなんだか首まで真っ赤になってしまった。
今年、彼女のお母さんは騎兵に、お兄さんは魔銃兵になったんだと話してくれた。
家族みんな働き者なんだね。
農場で新人研修があるからといったん別れ、昼刻の街角広場で待ち合わせをした。
待ち合わせに現れた彼女は制服ではなく私服のドレスを着ていた。
「あれ、制服じゃないんだ。」
「研修で汚れちゃったから着替えてきたの。…制服の方が良かった?」
「あ、いや、別にそう言うわけじゃ…」
「ふぅん、じゃあ今度は制服で来てあげるね。」
別に制服が目当てってわけじゃないけど、明日もデートをする約束をして帰ることにした。
次の日は炉開きだったけど抜け出してデートに向かった。
彼女も仕事始めだったので、農場地区から慌てて走ってきた。
普段の服装もいいけれど、こうやって制服で会うのもなんだか新鮮だね。
あんまり幸せ過ぎて浮かれまくって、またプロポーズに誘って困らせちゃったのは失敗だったかもしれない。