17,初陣
今年の山岳兵団リーグ戦開幕日がやってきた。
この日は国民総出でギート麦の収穫をして、夕刻からの近衛騎士隊トーナメントと山岳のリーグ戦の開幕を楽しむ。
私たちにとっては仕事の1つだけれど、国民にとってはエンターテインメントなんだ。
私の初戦は明日だけど、もうすでに緊張で手足が自分のものじゃないみたいだ。
念のため、キャラバンで強力なお守りであるヴェスタの宝剣を買っておこう。
「ジェフリーさん大丈夫?」
あ、しまった。
ルルーディさんに見られちゃった。
キャラバンは彼女の家の前にあるんだった…
「うん、まだ試合は明日だから大丈夫。」
緊張してるの気付かれちゃってるよね。
心配させてしまったかな。
彼女は今から農場管理会の仕事で収穫した麦の計量があるそうだ。
昼刻にいったん抜け出してデートする約束になっている。
途中で様子を見に行ったら、とても熱心に働いていた。
今日は仕事で汗をかいただろうから、水源の滝で涼むことにした。
「抜け出してきて怒られたりしない?」
「そのぶん頑張ってきたし、先輩たちも適当に休憩してたりするから大丈夫。」
楽しい時間って、どうしてこんなに早く過ぎてしまうんだろう。
デートが終わって麦の納品に戻ろうと思っていたら、彼女から呼び止められた。
「それじゃあこれ。試合のお守りだよ。今日ののうちに渡しておくね。」
渡されたのは星の日にしか手に入らない「虹色の花」だった。
こんな貴重な物をもらったら頑張らないといけないなぁ。
たぶんもったいなくて使えないと思うけどね。
そして迎えた初めてのリーグ戦。
彼女も応援に来てくれたんだから頑張らないと!
対戦相手はアンジェリンさん。
1番若い私には、誰であっても強敵だ。
開始の合図の直後に先制を取られ、何も出来ないまま試合が終わってしまった。
何がいけなかったのかとか、どう動けば良かったのかとか、あれこれ考えて落ち込むばかりだった。
彼女が駆け寄ってきて慰めの言葉をかけてくれた。
負けちゃって悔しいけど、こんなに優しくて可愛い恋人がそばにいてくれたら、もっと頑張ろうって思えるよ。
それじゃあまた一緒に探索に行こうね。
次こそはもっとカッコ良いところを見せるぞ!